この記事を読むことで、膝関節疾患のリハビリテーションにおいて生じやすい動作障害を把握することが出来ます!
今回は膝関節の関節可動域制限と動作障害についてまとめていきます。膝関節もハムストリングスの短縮によって伸展が制限されたり、人工膝関節置換術によって屈曲の制限が生じやすい箇所です。さらに膝関節の関節可動域制限は多くの動作障害につながる危険性があります。関節可動域制限から障害される動作を把握できると臨床に役立ちます。

引用 「関節可動域表示ならびに測定法」
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会(1995 年)
正座
正座は下腿と大腿を接地しなければならず膝関節屈曲150度ほど必要になります。これは人工膝関節置換術後等屈曲制限がある方では困難な動作です。しかし生活様式や催しによっては正座が必要になる場面もあると思います。そんな時は『正座椅子』というものがあります。ホームセンター等で販売していますので、試してみてもよいかと思います。
和式トイレ
こちらも正座同様膝関節150度必要になります。築年数が長い住宅や外出先等で和式トイレを利用する際には注意が必要になります。自宅トイレであれば和式トイレを洋式トイレに変更できる福祉用具もありますので、検討してみて下さい。
立ち上がり
立ち上がり動作と膝関節角度については、座っている椅子の高さが関係してきます。
40cm台からの立ち上がり時の膝屈曲角度は84.4±7.50度になった。 20 cm台からの立ち上がり時の膝屈曲角度は113.0± 4.76度になった。
引用 健常者における椅子の高さによる立ち上がり動作の相違に関する研究-3次元動作解析による一田中幸子,木藤伸宏,徳森公彦,山崎貴博広島国際大学 保健医療学部一理学療法学料
椅子の高さが高いときはは比較的浅い膝関節屈曲角度でも立ち上がり可能ですが、低い高さから立ち上がる時は深い膝関節屈曲角度が必要になります。つまり膝関節屈曲制限がある場合には立ち上がり可能な椅子の高さを確認しておくことが重要になります
階段昇降
階段昇降に関しても段差の高さが関与してきます。また身長が低い方が股関節をより曲げなければならないので、より膝関節の屈曲角度も必要になります。
18cm の階段を用いた Livingston ら 10)の報告では、昇段時における膝屈曲運動の最大値が 93.7°、降段時の最大値が 91.1°で当院のデータより小さかった。
第70回道南医学会大会一般演題
健常膝における階段昇降時の膝関節運動の特性 函館整形外科クリニック リハビリテーション部
上の論文より膝関節屈曲が約100度なければ生活する上での階段昇降に障害が生じる可能性があります。また上がり框等の比較的高い段差や身長の低い方はより一層膝関節屈曲角度が必要になりますので注意が必要です。
最後に
今回は膝関節可動域制限で生じやすい動作障害をまとめました。何度も繰り返しになりますが、患者様の身長や動作を行う環境(椅子や段差の高さ等)によっても動作の可否が変わってきますので、必ず適切な環境で動作を試しておくことが必要です。その上で関節可動域訓練によって可動域を確保していくことや、環境設定(玄関に台を置いて段差を分ける等)を行い患者様に最適な生活を提供することが広い意味でのリハビリテーションとなります。

国立大学の理学療法学科を卒業後、回復期病院や老人保健施設で勤務。福祉住環境コーディネーター2級。ファイナンシャルプランナー3級。趣味は読書。子育てしながら有益な情報を投稿出来るよう日々努力しています。
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